「巡回指導」は、適正化事業実施機関が行い、運輸開始後、定期的に実施されるものです。
「監査」は、国交省(地方運輸局)が行い、重大事故や通報等によって実施されるものです。
巡回指導時にA~Eの5段階評価の内、DまたはE評価となった場合は、営業所管轄の運輸支局へ通報され、監査の対象となります。
当事務所は巡回指導・監査対策についてもご相談いただけます
巡回指導
トラック事業が適正に実施されているかどうか、国土交通省の認可を受けた適正化事業実施機関の担当者が、運送事業所を巡回し指導をします。
運輸開始届を出して事業を開始すると、3~4ヶ月後(最近では約半年後)に適正化事業実施機関による巡回指導が行なわれます。その後は、2年に1度ほどの頻度で実施され、法令違反の未然防止や是正指導を目的としています。また、巡回指導は事業所(営業所)単位のため、営業所の新設や移転後にも行われます。
巡回指導でチェックされる7区分38項目
1.事業計画等(8項目)
① 主たる事務所及び営業所の名称、位置に変更はないか。
② 営業所に配置する事業用自動車の種別及び数に変更はないか。
③ 自動車車庫の位置及び収容能力に変更はないか。
④ 乗務員の休憩・睡眠施設の位置、収容能力は適正か。
⑤ 乗務員の休憩・睡眠施設の保守、管理は適正か。
⑥ 届出事項に変更はないか。(本社巡回に限る)
⑦ 自家用貨物自動車の違法な営業類似行為(白トラの利用等)はないか。
⑧ 名義貸し、事業の貸渡し等はないか。
2.帳票類の整備、報告等(5項目)
⑨ 事故記録が適正に記録され、保存されているか。
⑩ 自動車事故報告書を提出しているか。
⑪ 運転者台帳が適正に記入等され、保存されているか。
⑫ 車両台帳が整備され、適正に記入等されているか。(車検証のファイル)
⑬ 事業報告書及び事業実績報告書を提出しているか。(本社巡回に限る)
3.運行管理等(13項目)
⑭ 運行管理規程が定められているか。
⑮ 運行管理者が選任され、届出されているか。
⑯ 運行管理者に所定の研修(2年に一度)を受けさせているか。(手帳で確認できる)
⑰ 事業計画に従い、必要な員数の運転者を確保しているか。
⑱ 過労防止を配慮した勤務時間、乗務時間を定め、これを基に乗務割が作成され、休憩時間、睡眠のための時間が適正に管理されているか。
⑲ 過積載による運送を行っていないか。
⑳ 点呼の実施及びその記録、保存は適正か。
㉑ 乗務等の記録(運転日報)の作成・保存は適正か。
㉒ 運行記録計による記録及びその保存・活用は適正か。
㉓ 運行指示書(2泊3日以上の運行の場合のみ)の作成、指示、携行、保存は適正か。
㉔ 乗務員に対する輸送の安全確保に必要な指導監督を行っているか。
㉕ 特定の運転者に対して特別な指導を行っているか。
㉖ 特定の運転者に対して適性診断を受けさせているか。
4.車両管理等(5項目)
㉗ 整備管理規程が定められているか。
㉘ 整備管理者が選任され、届出されているか。
㉙ 整備管理者に所定の研修(2年に一度)を受けさせているか。
㉚ 日常点検基準を作成し、これに基づき点検を適正に行っているか。
㉛ 定期点検基準を作成し、これに基づき、適正に点検・整備を行い、点検整備記録簿等が保存されているか。(最重点項目)(3ヶ月、6ヶ月点検の記録。整備工場に預けている場合は、戻してもらう)
5.労基法等(4項目)
㉜ 就業規則が制定され、届出されているか。
㉝ 36協定が締結され、届出されているか。
㉞ 労働時間、休日労働について違法性はないか。(運転時間を除く)
㉟ 所要の健康診断を実施し、その記録・保存が適正にされているか。(入社してすぐの方も受けてもらう)
6.法定福利費(2項目)
㊱ 労災保険・雇用保険に加入しているか。
㊲ 健康保険・厚生年金保険に加入しているか。
7. 運輸安全マネジメント(1項目)
㊳ 運輸安全マネジメントの実施は適正か。
監査
運輸局によるトラック監査は「自動車運送事業等監査規則」と「自動車運送事業の監査方針について」という国土交通省の公示に基づいて行われています。
監査の目的は、「自動車運送に係る事故防止の徹底を期するとともに、運輸の適正を図ることを目的とする」とされており、事故防止のための施策です。
監査が入る主な端緒
① 事業用自動車の運転者が第一当事者と推定される死亡事故を引き起こした
② 適正化事業実施機関や利用者等からの情報、街頭監査や事業用自動車への添乗調査(事業用自動車に添乗(乗車)して運行状況等を確認する調査をいう。)の結果等により、法令違反の疑いがある
③ 事業用自動車の運転者が悪質違反(救護義務違反(ひき逃げ)、酒酔い運転、薬物等使用運転、妨害運転、無免許運転、酒気帯び運転、過労運転、無資格運転、無車検運行及び無保険運行をいう。)を引き起こした又は引き起こしたと疑われる
④ 都道府県公安委員会、都道府県労働局、道路管理者、観光庁等からの通知又は通報により、法令違反の疑いがある
⑤ 労働関係行政機関又は日本年金機構から、労働者災害補償保険、雇用保険、健康保険又は厚生年金保険に加入していない旨の通報があった事業者(最低賃金法に違反している旨の通報があった事業者)
⑥ 新規許可又は事業の譲受の認可を受けた(一般旅客自動車運送事業を既に経営している事業者を除くことができる。)
⑦ 事業計画の変更により、事業規模の拡大(営業区域の拡大、増車)を行った(3年以内に法令違反がない事業者を除くことができる。)
⑧ 事業用自動車の車両火災事故(旅客自動車に限る。)、ホイール・ボルトの折損による車輪脱落事故又は整備不良に起因すると認められる死傷事故を引き起こした
⑨ 事故報告書、規則に規定する事業報告書及び輸送実績報告書、臨時の報告書について、期限までに提出しない事業者、虚偽内容の報告をした事業者、報告した内容に法令違反の疑いがある
⑩ 道路運送法第35条第1項の規定による管理の受委託の許可を受けた事業者であって、受託者に法令違反の疑いがある委託者たる
⑪ 呼出指導の対象となったにもかかわらず、正当な理由なくこれに応じない
⑫ 行政処分等を受けた際に、事業の改善状況の報告を命じられた
⑬ その他事故、法令違反、事件、苦情等の状況を勘案し、監査を行うことが必要と認められる
⑭(貸切のみ)過去に重大な事故を引き起こしたことや、重大な事故に結びつく法令違反が疑われること等により、継続的な監視が必要
監査の種類・呼出指導
行政処分は点数制度
行政処分は、点数制度になっており、違反内容によって処分の重さが変わります。
行政処分の種類
監査の結果、違反があると判断された場合に、行政処分が行われます。また、処分に至らなくて勧告、警告などもあります。
行政処分後から監査終了まで
企業の信用や営業継続に直結し、正しい知識と迅速な対応が求められます。

