運送業(一般貨物自動車運送事業)許可を得て営業をするには、5つの要件を満たす必要があります。
1.場所的要件について
営業所、休憩・睡眠施設、車庫の3つが揃っていることです。
営業所
事業者の営業の本拠であり営業上の主要な事業活動の行われる一定の場所のことです。
営業所は都市計画法、建築基準法、農地法などの法令に適合していることが条件になります。
建物が自己所有の場合は登記簿謄本等、借入の場合はおおむね契約期間が、申請日より2年以上の賃貸借契約書の添付が必要です。
契約期間が2年未満のような場合は、契約期間満了時に自動的に更新される旨の記載があること、または次の更新についての誓約書の提出をすることもあります。
営業所の広さは基準はありませんが、営業所として使うための備品等が備えられていることが写真の添付で確認されます。
休憩睡眠施設
トラックの安全運行の確保のためには、ドライバーのための適切な休憩・睡眠施設を備えることが必要になります。
原則として営業所又は車庫に併設されることが求められます。
事務スペースと別に部屋を準備しなくても、一部屋をパーテーションなどで明確に区切って休憩施設にすることもできます。椅子やソファーを用意し、ドライバーさんが休めるようにします。
睡眠を与える必要がある場合は少なくとも同時睡眠者1人当たり2.5㎡以上の広さを確保します。
車庫
運送業の許可を取得するには車庫が必要になります。車庫は営業所に紐づけられているという考えになります。営業所一つにつき、第1車庫、第2車庫、第3車庫・・と設けることは可能です。原則営業所に併設しなければなりません。
都市計画法等の関係法令の規定に抵触しないことが条件で、市街化調整区域でも可能ですが、農地(地目が田・畑)は不可になります。
車庫は使用する車両すべてを駐車できるスペースが必要で、駐車した状態で車両の点検ができなければなりません。車両と車庫の境界及び車両相互間の間隔が50cm以上確保されることが必要です。
前面道路については、原則として道路幅員証明書を取得し車両制限令に適合することを確認します。
営業所と車庫の距離が、直線距離で10㎞以内でなければなりません。ただし、東京23区と横浜市、川崎市は20㎞以内です。
2.資金的要件について
事業開始に必要な自己資金が申請日以降許可日までの間、常時確保されている必要があります。
適切な事業計画、所要資金の調達に十分な裏付け、自己資金が所要資金に相当する金額以上であることなどが要件です。
金融機関の残高証明書を提出しますが、銀行口座は複数でも問題なく全ての口座の残高証明書を用意します。
2回目の残高証明書は、試験合格後に提出を求められます。その場合、同じ金融機関の同じ口座のものを提出します。
営業所や車庫を購入するのか借りるのか、トラックを最低限の5台用意するのか10台用意するかにもよって資金は変わってきます。
運送業の許可を取得するには一定以上の自己資金が必要になります。
事業資金の例
- 人件費
- 社会保険料、厚生年金保険料、雇用保険料、労災保険料など
- 研修費、福利厚生費など
- 車両の購入費やリース料などの車両費
- 自賠責保険や任意保険などの保険料
- 事業用自動車のオイル代
- 外注修繕費、部品費、タイヤチューブ費など
- 営業所、車庫に使用する土地や建物の購入費や賃借料
- 光熱費、通信費
- 必要な設備にかかる費用
- 新規許可申請の際の登録免許税
運送業を始めるには、一般的に1,500~3,000万円程度の資金が必要とされています。

3.人の要件について
運送業を開始するには人に関する要件が定められています。
申請の受付後には役員が法令試験を受験することになりますが、合格しないと他の要件を満たしていても許可がおりませんので注意が必要です。
欠格事由に当てはまらない
欠格事由に該当すると他の要件をすべて満たしていたとしても許可はおりません。欠格事由は次のとおりです。
(1)1年以上の懲役または禁錮以上の刑に処せられ、その執行が終わり又は執行を受けることがなくなった日から5年を経過しない者。
(2)一般貨物自動車運送事業または特定貨物自動車運送事業の許可取消しを受け、その取り消しの日から5年を経過しない者。
(3)未成年者又は成年被後見人である場合。

必要人数の運転者を確保する
運転者は、日々雇入れられる者、2ヶ月以内の期間を定めて雇用される者、試用期間中の者(14日を超えて引き続き使用される者を除く)は認められません。申請時に確保できていなくても確保予定であれば問題ありません。
運行管理者を確保する
運送業の営業所には、車両台数に応じた運行管理者を置く必要があります。申請時に確保できていなくても確保予定であれば申請することが可能です。
運行管理者とは
運行管理者は、運転者の常務割の作成や休憩・睡眠施設の保守管理、運転者の指導監督、点呼による運転者の疲労・睡眠・健康状態等の把握や安全運行の指示等、事業用自動車の運行の安全を確保するための業務を行います。
運行管理者になるには
2つの方法があります。
(1)国家資格である運行管理者試験に合格する事(試験は3月と8月位の年2回)受験するにあたり、次のいずれかの受験資格が必要です。
・運行管理に関し1年以上の実務経験を有する者
・自動車事故対策機構等が行う3日間の基礎講習を受講した者
(2)5年以上の実務経験及び5回以上の自動車事故対策機構等の講習を受講する事
・貨物事業者での運行管理に関し、5年以上の実務経験があること
・自動車事故対策機構等の基礎講習及び一般講習を5回以上受講すること(1年に1回しかカウントされません)
運行管理者の人数
運行管理者は営業所に必ず置かなければならない人員ですが、車両台数によってその必要人数が変わります(トレーラーは台数に含みません)
・0~29台 1人
・30~59台 2人
・60~89台 3人
運行管理者補助者の選任
運行管理者補助者は運行管理者を補助する立場にあり、点呼の3分の2を取ることができます。選任は義務付けられてはいませんが、実際には必要になるので、早めに人選しておくことをお勧めします。
補助者になるには、自動車事故対策機構等の基礎講習を3日間受ける必要があります。
整備管理者を確保する
運送業の営業所には、整備管理者を必ず置く必要があります。申請時に確保できていなくても確保予定で申請することができます。
整備管理者とは
自動車の整備や点検の実施、整備記録の管理、車庫の管理等を行います。運行管理者との兼任も可能ですし、選任人数に決まりはありません。
整備管理者になるには
・整備士の資格を有する
1級、2級、3級の自動車整備士の資格を持つ者
・2年以上の実務経験に整備管理者選任前研修(各運輸支局で受講)を修了した者(2年間一般貨物運送事業所のドライバーとして点検をしていた実績も実務経験になります)。
4.車両の要件について
5台以上の車両を用意する
一般貨物自動車運送事業を始める場合は、申請者が使用権限のある5台以上の事業用自動車を確保または確実に確保予定であることが求められます。事業計画上、運送する荷物に応じた車両を確保する必要もあります。
積載量があるトラックであれば、1、4、8ナンバーが可能ですが、軽自動車は含まれません。
使用権原があること
自己所有の場合、車検証の写しが必要
リースの場合、契約書(1年以上)が必要
新規購入の場合、契約書 が必要
5.役員法令試験について
トラック運送事業を営む際には、第一に関係法令の遵守が求められます。従って、
一般貨物自動車運送事業を申請する者あるいは法人の役員は、トラック運送の遂行に
必要な法令の知識を持っている(法令試験に合格する)ことが必要になります。
法人の場合は常勤役員のうち一人、個人の場合は事業主が受験します。
法令試験は、不合格の場合に再試験のチャンスが1回だけあります。その2回目の試験は別の役員の方でも可能です。合格できなかった場合は申請の取り下げ(又は却下処分)をすることになります。申請のやり直しになると、許可まで時間がかかってしまうためしっかりとした準備をしての受験が必要です。
ご不明な点、ご心配な点などございましたら、当時事務所へご相談ください。